言葉は「心の葉」

今から数十年前のこと。
南極観測隊の昭和基地で勤務する男性に送られた一通の手紙の話です。

 日本にいる奥さんからの一通の手紙を開いたとたん、

その手紙を抱き締めて泣き始めた隊員がありました。
同じ部屋の仲間達は、留守中の日本で何か不幸なできごとでもあったのかと心配になりました。

 

ところが、泣きながら差し出された手紙を見せられて、
他の仲間たちもまた泣き始めたのです。
大の男たちが部屋中でみんな泣いています。

 

その奥さんからの手紙は、たった一行、僅か3文字でした。
そこには、
     「あなた…」
とだけ書いてありました。

「あなた」という3文字の「心の葉」を読んだ時、
日本にいる奥さんの書ききれない思いのすべてが、
男性の心の中で広がったのでしょう。
その「心の葉」の思いは、男性の心を通して、他の仲間たちの心をいっぱいにし、
大の男たちが泣かしたのだと思います。


メールやラインや携帯だけで繋がっている友人関係において、
言葉の「心の葉」という部分が
ちゃんと伝わるコミュニケーションのツールになりうるには、
どれだけの言葉を発しないといけないか・・。
想像するだけで、気が遠くなります。

生身の身体ごと向き合って
夫婦として家族として仲間として共に過ごす日々があればこそ、
「あなた」という3文字は、「心の葉」となりえたのでしょうね。

この情報社会の中で、
私たちは、「心の葉」を共有できる人生の仲間をどれだけもっているでしょう。
まだまだ、人生半分ちょっとすぎたところ、
これからも、仲間を増やしていきたいと思っています。