父が遺してくれたもの

11年前、父が亡くなったときのことを
今でも時々思い出す。
リューマチの発病後、3年間の寝たきり生活の末、
父は、自宅で静かに息をひきとった。

大学を卒業し、父と同じ職業に就いたとき、
出産し、親になったとき、
父の後ろ姿に、人生の先輩としての姿が重なった。
そして、父の死後11年経った今、
自分の年齢が晩年の父の年齢に近づくにつれ、
父が自らの後ろ姿で 私に伝えたかったことに
少しずつ気付けるようになっている。

父が遺してくれたたくさんの書の中で
この詩は、私の一番のお気に入りである。


         奇跡の
      第三惑星 地球
     全体の三割が陸 
     七割が海に恵まれ  
   あらゆる生命体が共生している
  地球が誕生して 現在に到るまでの
    長い歴史を辿ってみると 
  今出逢っているものすべてが奇跡である
    そして一つ一つの命は
   一瞬に輝く光のようなものだ

この詩のように、
父は、最期の時まで命を燃やし、一瞬の光のように生ききった。

私も残りの命を燃やし、一瞬に輝く光となって、
我が子に遺すことができるだろうか?
父が遺してくれたものを受け継ぎ
繋いでいくことができるだろうか?

父が遺してくれたものの真の意味が分かるには、
父のようにひたむきに生きてみるしかないのだ。

             RANA